尊厳死とは?リビングウィルと法整備の現状
葬儀を教えて、
先生、「尊厳死」ってどういう意味ですか? 病気で苦しむのはかわいそうだから、楽に死なせてあげるってことですか?
葬儀スタッフ
う~ん、そう単純に言えるほど簡単な問題ではないんだな。確かに「尊厳死」は、回復の見込みがない病気で苦しんでいる人が、延命治療を拒否して自然な形で死を迎えることを選ぶことなんだけど、そこには「自己決定」というとても大切な考え方が関わってくるんだよ。
葬儀を教えて、
自己決定?って自分のことを自分で決めるってことですか?
葬儀スタッフ
そう!自分の体のこと、そして生き方や死に方について、誰かに決めつけられるのではなく、自分自身で決める権利のことだよ。尊厳死は、その人が自分らしく、人間としての尊厳を保ったまま最期を迎えるための選択肢の一つと考えられているんだよ。ただし、日本ではまだ法整備が進んでいないので、安楽死とは区別して考えないといけない難しい問題なんだ。
尊厳死とは。
「尊厳死」とは、人生の最終段階において、延命治療を望まずに自然な形で死を迎えるなど、自らの意志で死を選択することを指します。これを希望する場合、事前に「リビングウィル(尊厳死の宣言書)」という書面を作成しておくことができます。日本では尊厳死に関する明確な法的ガイドラインは現時点では存在せず、「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」、いわゆる尊厳死法案の提案が議論されています。(2014年現在)
尊厳死の定義と背景
「尊厳死」とは、回復の見込みがない病気による苦痛を取り除き、人間としての尊厳を保ったまま死を迎えることを指します。しかし、明確な定義は存在せず、法的にも認められていません。 一般的には、延命治療を中止または開始しないことによって自然な死を迎え入れることを指し、積極的安楽死とは区別されます。
尊厳死が議論される背景には、医療技術の進歩があります。延命治療が可能になった一方で、患者は過剰な医療介入や長期にわたる苦痛に直面する可能性が出てきました。このような状況下で、患者の自己決定権や苦痛の軽減、人間らしい最期の迎え方などが重要視されるようになり、尊厳死が注目されるようになりました。
リビングウィルとは何か?
「リビングウィル」とは、日本語で「事前意思表示書」と訳され、将来自分が回復の見込みのない状態になった場合に備え、医療やケアに関する自身の望みを記しておく文書のことです。具体的には、延命治療を望まない、苦痛を和らげることを優先してほしい、といった医療的なケアについての希望を記します。法的拘束力はありませんが、リビングウィルを作成することで、自分の意思を周囲に伝え、尊重してもらうための重要なツールとなりえます。
尊厳死の法的現状
日本では、尊厳死を直接的に認める法律はまだありません。そのため、医師が患者の延命治療を中止した場合、場合によっては殺人罪や業務上過失致死罪に問われる可能性も残されています。しかし、1990年の最高裁判決(いわゆる「名古屋高裁昭和63年7月22日判決」)では、一定の条件下においては、患者の自己決定権を尊重し、延命治療の差し止めを認める判断が示されました。
この判決は、後の延命治療に関する議論の礎となり、2003年には「成人患者と医師の関係における医療に関する決定のためのガイドライン」が厚生労働省から発表されました。このガイドラインでは、終末期医療における患者の意思決定の重要性や、医師とのコミュニケーションの必要性などが示されています。
ただし、これはあくまでもガイドラインであり、法的拘束力はありません。尊厳死に関する明確な法的根拠を求める声は依然として多く、リビングウィルなどの事前指示書の作成を含め、法整備や社会的な議論が求められています。
尊厳死法案の内容と議論
尊厳死法案は、これまで幾度か国会に提出されてきましたが、いまだ成立に至っていません。その主な内容は、回復の見込みがない重い病気で苦痛を抱えている患者に対して、本人の意思が明確な場合に限り、延命治療を中止または開始しないことを選択できるというものです。
しかし、この法案に対しては様々な議論があります。
賛成派は、個人の尊厳と自己決定権を尊重し、苦痛から解放される権利を保障すべきだと主張します。また、延命治療の費用負担や医療資源の分配の観点からも、法整備が必要であるという意見もあります。
一方、反対派は、生命の軽視につながる可能性や、患者が家族や医師からの圧力によって死を選ばされる懸念があることを指摘します。また、「回復の見込みがない」という判断の難しさや、延命治療の中止が本当に患者の最善の利益に合致するのかという倫理的な問題も提起されています。
尊厳死法案は、生命倫理、医療制度、社会福祉など、多岐にわたる問題と密接に関わっており、国民的な議論を深めていくことが重要です。
尊厳死を考える上でのポイント
尊厳死は、あくまで回復の見込みがない、つまり末期状態にある患者さんのみに認められる可能性がある選択です。そのため、まだ回復の可能性が残る段階での延命治療の中止とは明確に区別されます。
尊厳死を考える際には、患者さん本人の意思が何よりも尊重されるべきです。これは、自分らしく生きる権利、そして、どのような医療を受けたいか、あるいは受けたくないかを自分で決める権利は、すべての人に保障されているからです。
しかし、患者さんが意思を表明できない状態に陥る可能性も考えられます。そのような場合に備え、事前に自分の希望する医療やケアについて家族や医師と話し合い、書面に残しておく「リビングウィル」を作成しておくことが重要です。