知られざる葬儀用語『輿』とその歴史

知られざる葬儀用語『輿』とその歴史

葬儀に欠かせない『輿』とは

葬儀に参列すると、聞き慣れない言葉が使われていることに気づきます。その中でも、「輿（こし）」という言葉は、特に耳馴染みが薄いかもしれません。一体「輿」とは何を指す言葉なのでしょうか？ 今回は、葬儀において重要な役割を担う「輿」について、詳しく解説していきます。

『輿』の語源と歴史

「輿（こし）」とは、人が乗る乗り物のことを指し、特に身分の高い人が乗る豪華な乗り物を指すことが多かったようです。古代においては、神輿や天皇が乗る乗り物として用いられていました。時代が進むにつれて、輿は貴人や裕福な人々の乗り物として使われるようになり、その種類も多岐に渡りました。

葬儀において「輿」が使われるようになったのは、人が亡くなった後も、その魂は尊いものであるという考えがあったためだと考えられています。死者を丁重に扱うという文化から、輿に故人を乗せて墓地まで運ぶという習慣が生まれました。この「輿」こそが、現在の葬儀で使われる霊柩車の原型と言えるでしょう。

地域による『輿』の種類と特徴

葬儀に用いられる「輿（こし）」は、故人様の棺を乗せて運ぶための道具です。地域によってその形状や呼び名は異なり、それぞれに歴史や文化が息づいています。

例えば、関東地方では「宮型霊柩車」と呼ばれる、神社仏閣の屋根のような装飾を施した輿が一般的です。一方、関西地方では「布団輿」と呼ばれる、布団で覆われたシンプルな輿が多く見られます。

その他にも、山間部では急な斜面に対応するため、担ぎ棒が長く頑丈な輿が用いられたり、漁村では船の形をした輿で故人を弔うなど、地域独自の風習が色濃く反映されています。

このように、一見同じように見える輿にも、地域ごとの歴史や文化が深く関わっているのです。

現代における『輿』の変化

かつては、身分の高い人物が利用する乗り物として「輿」が存在していました。時代が下り、その役割は変化し、葬儀の場においては、故人様を乗せる霊柩車のことを指すようになりました。 しかしながら、現代では、霊柩車のことを『輿』と呼ぶことは少なくなってきています。 近年では、葬儀の形式が多様化し、火葬場への移動手段も変化してきているためです。例えば、家族葬など、小規模な葬儀では、霊柩車ではなく、寝台車で故人様を搬送することが増えています。また、地域によっては、マイクロバスなどを利用することもあります。このように、葬儀の形式や移動手段の変化に伴い、『輿』という言葉は、過去のものになりつつあると言えるでしょう。

『輿』に込められた想い

「輿（こし）」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか？ 現代ではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、葬儀の場においては、故人様を乗せる霊柩車のことを指す言葉として使われてきました。

なぜ「輿」という言葉が使われるようになったのでしょうか？ そこには、故人様を丁重にお送りしたい、あの世まで安全に送り届けたいという、古くからの日本人の想いが込められているのです。