映画だけではわからない「おくりびと」の仕事

映画だけではわからない「おくりびと」の仕事

「おくりびと」とは？ 葬儀における役割を紹介

2008年の映画『お departed 』の大ヒットで、一躍その名が知られるようになった「おくりびと」。故人の体を棺に納めるまでの儀式である「納棺」を執り行う、いわば「旅立ちの案内人」です。映画の中では、その仕事の厳粛さと、同時に残された家族への温かい配慮が描かれ、多くの人の心を打ちました。

しかし、映画で描かれたのはあくまでも一側面。実際の「おくりびと」の仕事は、納棺以外にも、葬儀の準備や進行のサポート、遺族への心のケアなど、多岐にわたります。今回は、映画だけではわからない、「おくりびと」の仕事内容について、詳しく解説していきます。

映画「おくりびと」で描かれたこと、描かれなかったこと

映画『おくりびと』は、モーツァルトの美しい旋律に乗せて、納棺師の仕事を丁寧に描いた作品として、多くの人に感動を与えました。特に、故人を生前の姿に近づけるための繊細な技術や、遺族の悲しみに寄り添う主人公の姿は、深く人々の心を打ちました。しかし、映画で描かれたことは、あくまでも一部分に過ぎません。実際の納棺師の仕事は、映画よりもさらに多岐にわたり、遺体の搬送や、葬儀社との打ち合わせ、遺族への葬儀に関する説明など、多くの業務をこなさなければなりません。また、故人や遺族の宗教や宗派に合わせた対応も求められます。映画では、主人公が納棺の仕事をしながら、自身の過去や家族との関係に向き合っていく様子が描かれましたが、現実の納棺師は、自身の感情を抑え、常に冷静かつ丁寧な対応を心がけなければなりません。映画はあくまでもフィクションですが、『おくりびと』を通して、人の死と向き合うことの大切さや、残された人々の想いを改めて認識するきっかけを与えてくれました。

湯灌師との違いは？ 知られざる専門性

映画『おくりびと』で広く知られるようになった、故人を棺に納めるまでの儀式。その美しい所作は多くの人の心を打ちましたが、実際にどのような仕事が行われているのか、映画だけではわからない部分も多いのではないでしょうか。

特に、故人の体を清め、身支度を整える「湯灌」と混同されがちですが、納棺師は湯灌を行う「湯灌師」とは別の専門職です。湯灌師が主に故人の身体を清潔にすることに対し、納棺師は湯灌後の遺体を棺に納めるための専門的な技術を持っています。

具体的には、故人の体型に合わせて棺内に綿を敷き詰めたり、顔色を整えたり、着付けや髪を整えたりと、多岐にわたる作業を行います。

また、遺族の希望を丁寧に聞き取り、故人らしい納棺を実現するのも納棺師の大切な役割です。故人の人柄や思い出を遺族と共有し、最後の時間を温かく演出する、いわば「グリーフケア」の役割も担っていると言えるでしょう。

ご遺族への配慮、そして故人への想い

映画『おくりびと』は、納棺師の仕事を通じた生と死の物語として多くの人々の心を打ちました。しかし、実際の納棺師の仕事は、映画で描かれた以上に、ご遺族への細やかな配慮と故人への深い想いに満ちているのです。

ご遺族にとっては、大切な家族との別れは、想像を絶する悲しみと喪失感に襲われる瞬間です。納棺師は、悲嘆に暮れるご遺族に寄り添い、温かい言葉をかけ、時には共に涙を流しながら、葬儀までの大切な時間を支える存在です。

そして、故人に対しては、生前の面影を偲びながら、丁寧に化粧を施し、衣装を整え、棺に納めます。それは、単なる作業ではなく、故人への最後の敬意と愛情を込めて、「旅立ち」の準備をする神聖な儀式と言えるでしょう。

映画では描ききれない、ご遺族と故人への深い想いが込められた納棺師の仕事。それは、命の尊厳と向き合い、残された人々の心を支える、尊い職業なのです。

「おくりびと」の仕事がもたらすもの

映画『おくりびと』は、納棺師の仕事を静かに、そして力強く描き出し、多くの人々に感動を与えました。しかし、映画はあくまでフィクション。現実の「おくりびと」の仕事は、華やかな側面だけではありません。彼らは、悲しみに暮れる遺族と日々向き合い、故人の人生の最後を彩るという重大な役割を担っています。

「おくりびと」の仕事は、遺族に寄り添い、故人を偲ぶための大切な時間を提供するという側面も持ち合わせています。彼らは、遺族の想いを汲み取りながら、故人らしいメイクや着付けを施し、安らかな眠りにつくように心を込めて送り出します。それは、遺族にとっての深い悲しみを癒やし、前向きに生きていくためのかけがえのない時間となるのです。