
鳥葬:自然回帰の儀礼
鳥葬とは、遺体を鳥に食べさせることで葬送する習俗のことです。主にチベットやモンゴルなど、遊牧民族の間で行われてきました。乾燥した気候や土壌条件から、土葬が困難な地域で生まれた文化といわれています。遺体は、ハゲワシなどの猛禽類によって骨になるまで食べ尽くされます。これは、魂が肉体という檻から解放され、天に還るという思想に基づいています。また、鳥は天と地を繋ぐ存在として神聖視されており、遺体を食べることで魂を天に運んでくれると信じられています。このように、鳥葬は死を単なる終わりではなく、自然への回帰、そして新たな生命の始まりと捉える、独特な死生観を反映した儀礼といえます。